STORY

マーガレットは、マサチューセッツ州のサウスボストンに住む中年のシングルマザー。1ドルショップのレジ係として働きながら、早産により障害を持って生まれた30代の娘ジョイスを養っている。そんなある日、遅刻の多さから勤め先をクビになってしまったマーガレット。突如収入が絶たれ、途方に暮れる彼女は、ジョイスの面倒を見てもらっているアパートの大家ドッティーと高校の同級生ジーンに相談を持ち掛ける。するとジーンから、高校時代の恋人マイクが医師として町に戻って来ていることを知らされる。意を決したマーガレットは、仕事を紹介してもらおうとマイクに会いに行くが……。

ATTENTION

 ピュリツァー賞に輝く劇作家デビッド・リンゼイ=アベアーの戯曲『グッドピープル』を、鵜山仁の演出で本邦初演! 米・サウスボストンに暮らすシングルマザー、マーガレットの悲喜こもごもをつづる。
 2011年春に上演されたブロードウェイ版は、同年のトニー賞・演劇部門で作品賞と主演女優賞の2部門にノミネート。圧倒的な存在感でマーガレット役を演じたフランシス・マクドーマンドが見事主演女優賞に輝いた。マクドーマンドといえば、映画「ファーゴ」(96年)と「スリー・ビルボード」(17年)でアカデミー主演女優賞に2度輝く、泣く子も黙る実力派。また、2014年のロンドン公演でマーガレット役を務めたイメルダ・スタウントンも、ミュージカル『スウィーニー・トッド』(13年)、『ジプシー』(16年)などで4度ローレンス・オリヴィエ賞を受賞するなど、イギリス演劇界を代表する名女優の一人で、本作のマーガレット役でも同賞の主演女優賞候補に挙がっている。そのほか、ドイツ、スペイン、オーストラリア、スイスなど世界各地で上演されている本作。そのいずれの地でも名だたる実力派たちがマーガレット役に挑んでおり、今回そこに戸田恵子の名も新たに加わることになる。人生のがけっぷちに立った中年女性の姿を戸田がどう体現するかに注目しよう。
 なお、“階級格差”についても描かれる本作。ブルーカラー(労働者階級)のマーガレットが暮らすサウスボストン(通称サウジー)は、今ではお洒落スポットとして人気だが、その昔はギャングやマフィアが横行する犯罪都市として知られていた。逆にマーガレットの元恋人で医者のマイクが暮らすチェスナットヒルは、ボストンの隣町ブルックライン(第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの生誕地)にある高級住宅地。観劇前に、これらの情報を頭の隅に置いておくとベターだ。

Director's Comment

いよいよ、稽古が始まる

演出:鵜山 仁

 『グッド ピープル』なんていう、なんだか皮肉なタイトルのこの作品。戯曲の中味は、人生とこの社会の裏表を経めぐる旅の、かなり目まぐるしい右往左往、アップダウンがあふれかえっている。
 この旅を通して発見したいのは、やはり人間の、したたかな生命力といったようなものなのだろうが、そもそも生命力なんていうものは、かなり錯綜したエネルギーの行き来がないと本当には手繰り寄せられない。
 表と裏、貧と富、善と悪、明と暗、白と黒、美と醜、理想と現実、昼と夜、戦争と平和、天国と地獄、生と死。数え上げればきりがないけれど、これら対立するブラスとマイナスのぶつかり合いこそが、やはり人生のエネルギーの源泉なのだと思う。
 『マクベス』もひそみにならえば「きれいはきたない、きたないはきれい」。一見立派に見える人たちの、立派でない部分。あまり立派には見えない人たちの、立派な部分にこそ、人生を暗くも明るくもする面白味…つまりは『グッド ピープル』の魅力が潜んでいるんだろうと思う。
 そんなわけで近々稽古が始まったら…何しろ一騎当千の俳優諸氏のぶつかり合い、そこで炸裂するに違いないエネルギー、怪しくも美しい生命力の百花繚乱に、演出者である僕も是非あやかりたいものだと、期待をふくらませている。

うやま ひとし●慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。 舞台芸術学院を経て、文学座へ。ウィット溢れる演出術で俳優の意外な一面を引き出す手腕と、言葉から着想されるイメージを様々な表現・素材を使って劇空間に現出させる力に定評がある。2004年、2010年、2016年、読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞。2007年6月〜2010年8月、新国立劇場の第四代演劇芸術監督を務める。
 代表作に『グリークス』(第25回紀伊國屋演劇賞団体賞)(文学座)、『コペンハーゲン』『ヘンリー六世』(新国立劇場)、『父と暮せば』(こまつ座)、等。
 NLTでは『オスカー』『しあわせの雨傘』に続いて、三度目の演出となる。

DAVID LINDSAY-ABAIRE

劇作家 デビッド・リンゼイ=アベアー

 子どもを失った夫婦の再生を描いた『ラビット・ホール』(06年)でピュリツァー賞を獲得した劇作家のデビッド・リンゼイ=アベアー。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督×ニコール・キッドマン製作・主演で映画化(10年)もされた同作や『グッドピープル』など、“普通の人々”の営みを皮肉やユーモアを交えつつ、温かみのある視点で描いた作品で高い評価を得ている。ストレートプレイのほか、『ハイ・フィデリティ』(06年)、『シュレック』(08年)といった同名映画をもとにしたミュージカルの上演台本や、「インクハート/魔法の声」(08年)や「ガーディアンズ 伝説の勇者たち」(12年)など映画の脚本も手掛けている。

CAST

戸田恵子
マーガレット

村上弘明
マイク

サヘル・ローズ
ケイト

木村有里
ドッティー

阿知波悟美
ジーン

高田 翔
[ジャニーズJr.]
スティーヴィー

Introduction to the Characters

登場人物たち
(登場順)

マーガレット(愛称:マーギー)
[戸田恵子]

年齢50歳代。1ドルショップでパート勤めだが、遅刻が多いので解雇されてしまう。30歳を過ぎた障碍者の娘、ジョイスと二人暮らし。サウシーと呼ばれる、サウスボストンに生まれ、今でも住んでいる。夫とは早くに別れ、一人で娘を育ててきたが、疲れてしまっている。「もしマイクと分かれなかったら、どうなっていただろう?」と何度も思ったことがある。

スティーヴィー・グライムス
[高田翔]

年齢20代後半。マーギーの勤める1ドルショップの正社員。彼の母親スージーはすでに亡くなっているが、マーギーの友人、同級生であった。マーギーを見る目は複雑だが、彼も会社の歯車であり、出来ることは限られている。教会が運営資金を得るためのビンゴに毎週行っている。

ジーン
[阿知波悟美]

マーギーの同級生。ホテルの宴会場で配膳のパートをしている。しかし週に二回勤務に減らされ、他のパートを探すつもりになっている。性格は思ったことをズバズバ言うタイプだが、悪気は無い。マーギーを気遣っている親友といえるだろう。ドッティーとは腐れ縁という感じ。

ドッティー
[木村有里]

60代半ば。マーギーのアパートの大家。ラッセルという失業中の息子がいる。嫁はフラニー。美容院で働いている。スタイロフォームを加工してウサギの置物を作って売っているが、あまり売れていない様子。マーギーの娘ジョイスを、マーギーがパートに出る時は預かっているが、預かり賃を貰っている。

マイク・ディロン
[村上弘明]

医師。ペンシルベニア大学医学部卒業。ボストンに帰ってきて開業した。マーギーたちの高校の同級生で、同じサウシー出身。グッドピープルである。いまは郊外のチェスナットヒル(高級住宅街)に住む。最近、成功者として地元の少年少女クラブで講演をした。ジーンはその会場で配膳のパートをしていたため彼が帰ってきたことを知る。

ケイト・ディロン
[サヘル・ローズ]

マイクの妻。30代前半で若い。父親はワシントンDCでマイクが働いていた、大学病院の上司。政略結婚ではないが、父の勧めで結婚をしたようである。アリーという小さな娘がいる。今はボストン大学で文学を教えている。マイクの大学時代は友人を含めて知っているが、故郷での生活は知らない。マーギーから昔のマイクの話を聞きたがる。

-->

THEATRE

博品館劇場
東京都中央区銀座8-8-11 TEL:03-3571-1003

STAFF

作:デビッド・リンゼイ=アベアー 翻訳:黒田絵美子 演出:鵜山 仁
演出助手:山上 優 美術:乗峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:小林 史 衣裳:倉岡智一 舞台監督:竹内一貴 制作:小川 浩(NLT) / 樋口正太(博品館劇場)
著作権代理:タトル・モリ エイジェンシー